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(写真 左から)ヤマショウビン、シマアオジ、アカハラダカ、カラシラサギ 
撮影:柴田久元様

【2009年5月10日(日)〜12日(月)】

 5月10日:早苗の植えられた水田脇の電線にヤマショウビンが止まっている。我々はそれを満面の笑みで遠目から眺めていた。対馬ツアーでは久しぶりの出会いだ。一通り望遠鏡で観察したので、もう少し近づいて見ましょうと、歩き始めたその時・・・。
「市会議員候補の×○△でございます。元気一杯に頑張っております!」
大音量と共に選挙カーが近づいてきた。あろうことかヤマショウビンの止まる真下の道路を通過しようとしている。「だめだ!近づくな」というつもりで手を振ると、
「暖かいご声援有り難うございます!お手を振ってのご声援、はっきりと、しっかりと見えております。有り難うございます。有り難うございます。×○△は皆様のために精一杯頑張って参ります。」
一際張り上げられた声にびっくりしたヤマショウビンは当然のことながら飛去ってしまった・・・。期待一番のヤマショウビンを全員が「はっきりと、しっかりと」見終わった後だから話せる笑い話である。

 今年からワイバードの対馬ツアーは、対馬観光物産協会様並びに対馬野鳥の会様のご協力により、事前情報や現地でのバックアップを頂けるようになった。私の携帯にはツアー出発の2日前から続々と鳥情報が寄せられて来た。対馬訪島までにはまだまだ時間があるものの、現地の方々の並々ならぬ心意気が伝わってきて、なんとも心強い限りである。前日情報としてはヤマショウビン3、コウライウグイス2などが届いていた。ヤマショウビンの情報が少なかったここ数年に比べると、大いに期待が持てる状況である。
 ツアー初日のこの日、対馬空港から佐護に向かう途中でN事務局長に連絡を取ると、今日は朝から2個体が出ているとのこと。はやる気持ちを抑えながら佐護へと向かう。対馬野鳥の会の方々は日曜日と言うこともあり、佐護のバードウォッチング公園でコウライウグイスの出現を待っていらっしゃるとのこと。我々が佐護に到着できたのは12:30。ひとまず情報を頂いた佐護小中学校や仁田ノ内、塩田などを見て回る。この時点ではヤマショウビンは見られなかったが、上空を飛ぶアカハラダカやミサゴのほかダイサギ、チュウサギ、コサギなどサギ類を見る。ただ、このところ晴天が続いており、セキレイ類やタヒバリ類などの姿は皆無。全体に鳥影は薄い。バードウォッチング公園で対馬野鳥の会の方々にご挨拶し、展望塔でコウライウグイスの出現を待つ。昼食を摂りながら待つことしばし、お客様の内お二人がご覧になったほか、少し後で私も背を見せて飛ぶ姿をチラと見たが、他の方は確認できずじまい。しばらく待つもその後の出現はなく、愛想良く囀るメジロの姿やコウライキジの声に慰められる。
 塩田でカラシラサギ1、オグロシギ2、アオアシシギ1、ミヤマガラスなどを見て、再びヤマショウビンを探しに仁田ノ内、佐護小中学校方面へ。なかなか見つからず、N事務局長としばらく立ち話をする。自宅へ帰りかけたN氏の車が数m先でいきなり止まった。「いました」と言われてその方向を見ると遠くの電線にヤマショウビンが白いお腹を見せて止まっているではないか。さすがに毎年ヤマショウビンを見つけ慣れている人は違う。いきなり初日からヤマショウビンに出会えた喜びを噛みしめながら、水田脇の電線に止まるヤマショウビンを見ていた・・・。この夜の夕食がヤマショウビンと×○△候補の話題で盛り上がったのは言うまでもない。

 5月11日:昨夜は風もなく煌々たる満月が海面を照らしていた。夜に渡る鳥達にとっては絶好のコンディションであろう。思った通り夜明けから元気に鳴いているのはメジロばかり。かろうじてキビタキの声が聞かれ、ニュウナイスズメを見ることができた。昨日の状況から周辺での朝探はやめて、朝弁当を持ってそのまま佐護へ向かうことにした。途中の車窓から聞かれたのはヤブサメ、オオルリがそれぞれ一度ずつ。後はシジュウカラやヤマガラばかりである。
佐護を中心に回ってみるが、佐護川でアカモズ1、カルガモ2、コガモ2、マガモ3などが見られた他は仁田ノ内で情報を頂いていたナベヅルの幼鳥1羽、湊浜でノジコ、ウミネコなどを見た程度。ヤマショウビン、コウライウグイス、カラシラサギなどいずれも再び見ることはなく、塩田のシギはオグロシギ1のみになっていた。
 佐護を歩き回るのも少々くたびれてきたので、気分転換も含めこれまで行ったことのないポイントへ向かうことにする。志多留を通って田の浜へ。道中ほとんど鳥影もなく、田の浜ではオオヨシキリ、イソヒヨドリ、カケスを新たにリストへ加えたのみ。北部での鳥見はそろそろ切り上げ、南部へ向かう。
 内院は昨年ハシグロヒタキを見ることができた場所であるが、今日はさっぱり鳥がいない。アオジの♀を見たのと上空を渡っていくハチクマを何羽か見ただけで浅藻、内山峠を回ってホテルへ向かった。
 この夜は対馬野鳥の会・対馬観光物産協会の方々と懇親会。お互いに自己紹介や対馬の印象などを語り、鳥好き同士の和気藹々とした雰囲気の中で9時過ぎまで交流を深めた。

 5月12日:5時前に目覚め窓の外を見る。まだ暗い空に明けの明星が一際美しく輝いている。今日も晴れだ。天気が良いことに溜息が出るのだから困ったものである。明けていく空を見ていると5:10に一番でトビが飛び始め、5:14にメジロが囀り始めた。その後ツバメ、ウグイス、ハシブトガラス、シジュウカラ、ミサゴ、ヒヨドリと続いていった。鳥の早起き順を調べてみるのも面白いかもしれない。
 昨日の懇親会で「湯多里ランド」が面白い、と言う情報を頂いたので、宿からも近いし朝探はそこへ行ってみることにした。ダイサギが2羽で飛び、これまでどういう訳か姿を見なかったホオジロが樹上で囀っている。朝の爽やかな空気を楽しんでいると、グランドゴルフ場を低く横切って樹上に止まった小鳥がいる。顔が黒く胸が黄色、シマアオジの♂だ!島の渡りは幸せが向こうからやってきてくれる。天気が良くて出て行く鳥もいれば入ってくる鳥もいるのだ。これはひょっとすると・・・。
 昨日ゆっくりと朝食を楽しむことができなかったので、今日は出発時間を8時にして落ち着いて朝ご飯を食べて頂くことにする。折角の島旅を鳥ばかりで過ごすのはもったいない。新緑の美しさ、空気の爽やかさを愛でながら頂くおいしい食事も旅の楽しみの一つ。気持ちにゆとりがあれば事故にも遭いにくい。気持ちの豊かさが鳥見の幸運に繋がるという訳ではないが、鳥が出なくてもイライラせずに状況を楽しむのが島の渡りの極意ではないだろうか。
 昨日は成果の無かった内院だが、鳥が入っていることは十分考えられる。一番にこのポイントへ向かう。見たところ昨日と状況は変わっていないようだ。農道を歩きながら探していると1羽の小鳥が飛びながら人家の庭先にある植え込みに入るのが目に入った。何となく気になって望遠鏡を覗いてみると、離れていて視界も悪くはっきりとはしないが赤茶色の頭に黄色い胸のようだ。少し近づいて確認すると間違いない!シマノジコ♂だ。ヤマショウビンの次にお客様からリクエストが高かったのは、まさにこの鳥である。慌てずに全員が一通り望遠鏡で確認するのを待って人家に近づく。ブロック塀の上に止まっているのをはっきりと見ることができた。この後一部の人は農地でシマノジコ1とコホオアカ1も目にする。この日も対馬野鳥の会のK氏が様子を見に来て下さり、電線に止まっているコムクドリを教えて頂いたほか近くの小学校でトイレが借りられるよう手配して下さった。細かい心配りに感謝せずにはおられない。
 しばらくはシマノジコの余韻に浸っていたいところだが、我々はこの日の午後で対馬を後にしなければならない。内院でK氏とお別れし、浅藻、豆酘、瀬と順に探鳥ポイントを回りながら空港方面へ移動を開始する。椎根で独特の石屋根の建物を見物するあたりから、晴天続きの天気が下り坂になってきた。大した降りではないがポツポツと落ちてきた。加志浜でアマサギの群れを見たのをキリにして空港へ向かった。
 今回のツアーは全体的に鳥が寂しかったものの、ヤマショウビン、シマノジコを始めカラシラサギ、コウライウグイス、アカハラダカ、ナベヅルなど「これぞ」という鳥に出会うことができた。対馬の方々のご厚意と新緑の島並みを噛みしめながらボーディングブリッジを歩いているその時。地面に1羽の鳥が見えた。メダイチドリだ。これまで全く見ていなかった鳥が最後の最後に我々を見送りに来てくれたようだ。対馬は人ばかりでなく鳥までもが律義であった。

森山 春樹
一般 | No.388 管理人 2009/05/10


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